海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

いつまでも崑ちゃん
 かつて、作家の花登筐(はなとこばこ)は、この人の芸を見て、こう評した。「歩くだけで体からおかしみが滲み出る天性の喜劇役者」と。その天性の喜劇役者の名は、大村崑。
 76歳だが、元気ハツラツのあのドリンクのおかげか、肌の色艶がいい。芸歴50年を超える大ベテランだが、大村崑とフルネームで呼ぶと堅苦しくなる。今でも「崑ちゃーん」と呼びたくなる。ご本人も、「いつまでも崑ちゃーんと呼んでほしい」と言っている。

 崑ちゃんは、昭和6(1931)年、神戸生まれ。幼いころからふざけるのが好き、人を笑わせるのが好きな「おちょけ(お調子者)」だった。
 写真館を営んでいた父が演劇好きだったので、よく劇場に連れて行ってもらった。このときの見聞が、後に役立ったのは言うまでもない。
 しかし、その父は、昭和16年の元日に急逝。その後、母が再婚したため、伯父に引き取られ、そこで厳しくしつけてもらったという。伯父とは、後に親子の縁を結ぶ。
 歌手のステージの司会役を経て、大阪北野劇場専属のコメディアンとして舞台に立っていた。昭和33年、民放開局と同時に《やりくりアパート》でテレビデビュー。以来、《番頭はんと丁稚どん》《とんま天狗》などで、たちまち売れっ子となる。トレードマークの黒ぶちメガネをずり下げ、右斜めを見つめる仕草は忘れ難い。
 現在も、時にシリアス、時にコミカル、幅広い役柄をこなしている。つい最近まで、日本喜劇人協会の会長も務めていた。

こんだからこんだ
 10年ほど前から、週末は、丹波篠山の田舎暮らしをしている。800年の歴史がある立杭焼の窯元が並ぶ山里の近くに、家を建てた。50代に入ってから田舎暮らしのため、あちこち土地を探していたが、縁があって、兵庫県篠山市今田町に住むことになった。「こん」だから「こんだ」にしたそうな。
 真面目な話、ここに決めた理由はいくつかある。「なんといっても風景が抜群。 《へ》の字のように見える山が二つあるんだけど、その間に太陽が沈む光景には見とれてしまう。僕、西日が好きやねん。金星も傍らに見えることがあるねん。地元で、極楽の余り風と呼ばれる風も心地よい。秋になると、コスモスがきれいや。死んだらお墓に植えてなと頼んでいる。それに、ここの人は、人が良すぎるほどいい」

 戦後、食料調達に父(伯父)と丹波周辺に行っていた頃から、田舎への憧れがあった。「立ち寄ったある農家のおばさんが、ふかした芋を割り箸に挿して分けてくれた。その家の縁側でおやじと食べた。おやじは、自分の分も僕にくれた。二人の優しさが身に染みた忘れられない味や」。

恩返しの《崑の村》
 家は、《崑の村》と銘打って一般の人達に無料開放している。広さは、1400平方メートル。めがねコレクションの展示コーナーや崑ちゃんグッズを販売するおみやげコーナーもある。「ここにいると、芸能関係以外の人と触れ合えるのが嬉しい。みんなナマコンに会えた!言うてくれる。舞台の楽屋では時間なくても、ここならゆっくりファンとも語らえる。縁側に座って、のんびりと一緒に景色を楽しんでもらえたらいい」
 ここには、《有名塾》なるものがある。仲代達矢さんの《無名塾》の向こうを張って、有名な喜劇人になってという思いを込めて立ち上げた。崑の村に作った舞台で、コント、マジック、漫才、落語、歌…それぞれがやりたいことを舞台に立って表現する。それを見ながら、崑ちゃんがアドバイスする。立ち居振る舞いや言葉遣いも教える。
 これまで自分を育ててくれた人への感謝の気持ち、社会への恩返しのつもりで、月謝は取らない。いまは塾生10人ほど。人に教える喜びを味わっている。
 健康への気配りは人一倍だ。とにかく時間さえあれば、寝るようにしている。断続的睡眠を取る。
 若いころ、結核で片肺を切除している。17年前に、早期の大腸ガンが発見されたが、内視鏡で切除して、大事に至らずに済んだ。「それからというもの医者と仲良し。週に一回は医者の顔を見に行くようにしている」。
 「最近の人は、幸せすぎてか、笑わないし、泣かない。無表情。腹がよじれるような笑いが必要。健康には笑うことがいちばん!」と確信している。
 崑ちゃんが出ているテレビや舞台を見て、元気をもらったというお便りが続々届いた。それを聞きながら、崑ちゃんは、「生きていてよかったなぁ。ぼくは、ほんまは結核で死んでたんや。好きな芸能界入って、みんなにこんなふうに思ってもらえて、死なんでよかった。生きててよかったなぁ」と言葉を詰まらせながら、述懐した。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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