海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 あきらめなければ夢は絶対かなう。そのお手本のような人がいる。司法試験にチャレンジすること23回目にしてようやく合格。還暦を前にして、ようやく念願の弁護士になった神山昌子さんだ。
 いま63歳の新米弁護士は、司法制度改革の一環としてスタートした市民の法律相談の窓口《日本司法支援センター(愛称・法テラス)》のスタッフ弁護士として、北海道・旭川に赴任して、北の大地を駆け巡っている。
 旭川を中心に、稚内、名寄、紋別、留萌など道北全域が守備範囲になる。四国と東京都を合わせたぐらいの広さを愛車で回る。1ヵ月の走行距離は2000キロを軽く超えるが、運転が好きなので苦にはならない。

 いくつもの人生の扉
 昭和19年、栃木県の生まれだが、育ったのは、秋田。6歳から11歳までを過ごした。雪国育ちだから、スキーが好きだから、北海道勤務を希望した。
 中学の時、図書室にあった本を五十音順に読破していった。本好きが、その後、弁護士への扉を開くことになる。
 国際基督教大学では英文学でシェークスピアを専攻した。演劇に興味を抱き、大学卒業後、文学座の研究生になる。7期生の同期には、原田大二郎や宇都宮雅代、新橋耐子がいる。演劇経験は、物おじしない言葉遣いや身振り手振りなど、法廷でも役にたっていることがある。
 演劇の稽古をしながら、ふと「アポロが月に着いたという時代に、非生産的なことをしていていいのか!」と思い立ち、違う扉をたたく。日商岩井に入社したが、男女雇用機会均等法もない時代のこと、海外駐在員にもなれず、仕事は単調だった。30歳で、職場の同僚と結婚。退職した。
 神山さんが、法律を初めて意識したのは、夫との離婚問題が浮上した時だった。結婚わずか4ヵ月で、「妻という座が自分に向いていないことに気づいた」神山さんは、離婚相談で弁護士を訪ねたが、「暴力や浮気が原因でもないのに、妻に相応しくないという理由だけでは離婚出来ない」と言われた。結婚するときは返事一つで結婚出来るのに、どうして離婚はスムーズに出来ないのか、もどかしさを感じた。法律とは不自然なものという思いが残った。結局は、夫の海外赴任に伴い、離婚が成立する。そして、シングルマザーになる。
 食堂のレジやら、宅配便の配達やらのパート勤めをしながら、子育てをする。そんなパート勤務の合間に立ち寄った書店で見つけた法律入門書が、新たな人生の扉を開けることになる。その本を読んで「これまで自分中心に考えていたが、法律は利益調整の学問だと気づいた。様々な価値観のバランスを図る法律の世界の奥深さに気づいた」
 司法試験には、年齢制限もないし、男女差別もないから受けてみよう!と思い立ち、睡眠時間を削って、司法試験の勉強を始めた。勉強が大好きだという神山さんにとって、受験勉強は、さして苦にならなかった。

 しかし、司法試験のハードルは想像以上に高い。制度が変わった新・司法試験の合格率でもおよそ40%。神山さんの時代は、2%くらいの合格率だった。短答試験が60問、論文試験が6科目2問ずつ。そして口述試験と3段階をクリアしないと合格出来ない。論文が最大の難関で、神山さんは、ここをなかなか突破出来なかった。
 初めて受験したのが、36歳のとき。以来、何度も厚い壁に跳ね返された。ちょうど10回目の受験の時、今度こそ受かっただろうと密かに期待を抱いていたが、不合格となり、自宅に戻って、悔しくて泣いて、諦めかけようとしていたら、当時、小学生の一人息子が「母さんの夢なんだろ、諦めるなよ」と励ましてくれた。一番しわ寄せを受けていた息子からの一言は胸に響いた。またチャレンジが始まった。
 そして59歳、23回目のチャレンジにしてようやく合格した。合格掲示板に自分の番号を見つけた時、「この試験は受かるものなんだ」と実感した。
 夢をあきらめなかった神山さんは、団塊世代の希望の星だ。神山さんは「わがまま主義を勧める。自分が一番やりたいことには、わがままでいい。周囲がやめろというのは、失敗を心配しているだけ。自己責任が大原則だけど、わがままを貫けば、周囲も味方になってくれる」と語る。

 社会を照らしたい
 《日本司法支援センター(愛称・法テラス)》とは、法的トラブルの解決に役立つ情報提供、無料法律相談、訴訟費用立て替え、犯罪被害者支援、国選弁護など、誰もが簡単に法律サービスをうけられるように設けられた。いわば、よろず法律相談窓口だ。全国50ヶ所にある。法テラスというネーミングには、法律で社会を明るく照らしたい、みんながくつろげる日当たりのいいテラスのような場所という思いが込められている。
 神山さんは、「弁護士として遅いスタートだったが、残りの人生を、少しでも困っている人の役に立ちたくて」「苦労や心配事の人生経験を積んでいる分、相談者の気持ちに寄り添えるだろうから」法テラスに名乗りをあげた。
 苦節23年の末になった弁護士の醍醐味とは何かを問うた。
 「依頼者に喜ばれることかな。自己破産や債務処理に悩む人が、他の弁護士に断られたあげく、私の所を訪れ、面談の末、引き受けますよと言った瞬間、ほっとして笑顔を見せてもらえる。そんな時、弁護士になってよかったなとつくづく思います」

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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