海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 世紀の大発見は、ちょうど一年前の8月のことだった。
 兵庫県丹波市で、国内最大規模といわれる恐竜の化石が発見されたのだ。化石は、親しみを込めて《丹波竜》と呼ばれている。白亜紀前期、一億四千万年前頃の大型草食恐竜ティタノサウルス類のものと考えられている。全長の推定20メートル、これまで発掘された草食恐竜化石の中でも最も大きなものとみられる。
 大発見は、何の前触れもなく、偶然のうちに訪れた。この恐竜の化石を見つけたのは、学者でも研究者でもない。化石探しが趣味の高校教師・足立洌(きよし)さんと、その親友・村上茂さんだ。

友情が呼んだ大発見

 運命の日、去年8月7日。場所は、丹波市山南町の篠山川の河原。JR福知山線下滝駅から、およそ1キロ東に行ったところだ。今も、レンガ造りの建物が残る旧・上久下水力発電所の真下にある切り立った岩盤から化石は見つかった。ランプ生活の村に電気をもたらした発電所の下に、新たな町おこしの種が眠っていたわけだ。
 二人は、何かを見つけ出さねばという使命感もなく、遊び気分で河原にいた。午前中は何も見つからず、あまりの暑さにたまりかね、篠山川で水浴びをした。
 午後、発掘を再開してほどなく、村上さんが、赤い泥の層に灰色の石のようなものを見つけた。周囲の泥を落とすと棒状のものがまっすぐに突き刺さっていた。これが実は恐竜の肋骨だとわかるのは、後になってからのことだ。
 化石探しの先輩の足立さんは言う。「村上くんが見つけた場所は、学者や研究者なら、こんなところにあるはずがないと思うところ。素人だからこそ、見つけられた」
 足立さんは、その化石を持ち帰って調べているうちに、「ひょっとすると、恐竜の化石かもしれない」と思い始め、胸が高鳴った。
 その2日後、現場で6時間あまり発掘をして、肋骨らしきものをさらに数本発見した。その足で、三田市にある《人と自然の博物館》に向かった。恐竜化石に詳しい三枝春生研究員に見てもらう。最初、いぶかしげに彼らを見ていた三枝さんの表情が、見る間に変わった。「本物の恐竜化石だ!」研究室も大騒ぎになった。
 今年2月15日からの本発掘で、尻尾がほぼ完璧な状態で見つかった。肋骨1点、尻尾の骨(尾椎)が16点。推定7メートルの尾の8割が出土した。

 そして6月には、恐竜の頭の骨の一部が見つかり、さらに話題を呼んだ。今後の発掘調査で、恐竜の全貌が明らかになる可能性が高まっている。

恐竜が変えた人生

 二人は、すっかり時の人となり、取材を受けたり、講演に行ったりと多忙な毎日を送っている。
 足立さん(63)は岡山県美作市の生まれ。美作市周辺には、古墳や遺跡がたくさんあり、幼い頃、考古学者になりたいと夢みていた。丹波市の柏原高校を定年退職した後も、非常勤講師として英語を教えている。週末には、柏原市の観光ボランティアも引き受けている。そんな仕事の合間をぬって趣味の化石探しを続けていた。足立さんは、特に生痕化石(1億年以上前の昆虫たちが這った後が残る化石)にロマンを感じている。「恐竜の足跡も昆虫の足跡も同じ《いのち》の証し」だという。
 村上さん(62)は、丹波市山南町の生まれ。映像機器メーカーの営業マンだったが定年退職して、故郷にUターン。悠々自適の暮らしを楽しんでいた。村上さんは、「定年退職後は、のんびりゴルフを楽しみにしていたのに、一回もゴルフ場に行けない」と笑う。
 二人は、大学時代の同級生だった。足立さんが、故郷に村上さんが帰ってきたと聞き付け、35年ぶりに、再会を果たし、化石探しに誘った。村上さんは、「足立くんは、僕が幼いころ遊んだ篠山川流域のことを僕以上に詳しく知っていた。これは負けていられない」と思った。たまには、化石探しに付き合うのもいいかと、軽い乗りで参加したら、人生が一変したのだった。

地域を恐竜で変えたい

 丹波市では、《恐竜を活かしたまちづくり課》を設けて、文字通り、恐竜を地域振興に結び付けたいと施策を考えている。
 当然、二人も、この発見を故郷の活性化に役立てたいと考えている。
 足立さんはこう言う。「恐竜は知的財産。環境や自然、生命に興味を持ち学習するチャンスだ。子どもたちを自然に戻すきっかけにしたい。自然は、疑問も与え答えも用意してくれている。疑問を見つけ、解く力も身につけてほしい。恐竜化石にしがみつくのではなく、恐竜の力を借りて、地域活性化をはかろう!」
 村上さんはこう言う。「恐竜は、心の宝物。恐竜が一役買うから、地域活性化をみんなで考えてとテーマを与えてくれたのではないだろうか…。大規模なハード整備はいらない。一時的な活性化で自然を失うようなことはあってはならない。人と自然の博物館の分館を設置したらいい。しかも上久下の伝統産業・檜皮ぶきの民家風の建物で。それから、発掘現場にある旧・上久下発電所を使ったパネル展示をしたり、恐竜列車を走らせたり…。アイデアは次々沸いてくる」
 二人と話していると、世紀の大発見をしたというような気負った思いを感じさせない。恐竜化石が自分たちを変えたように、地域が変わっていったらいいという思いで一致している。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)
「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

 堀江実のポエムコンサートをCDでお届けします。

  詩と朗読
  フルート
  ピアノ
  構 成

  Disk1
  Disk2
 堀江実
 イネ・セイミ
 はちまん正人
 佐藤よりこ

 光のように
 花のように

 言霊に癒されるCD堀江実のポエムガーデン
 やさしい風がふいています。
 木々の梢は光っています。
 あなたの心がやすらぎで満たされますように。
 あなたの心に喜びがあふれますように。

2003年10月22日発売 CD2枚組 3,150円(税込み)