海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 子ども番組、音楽番組、料理番組…何でもこなし、歌って踊れて料理のうまい文字通りのエンターティナーと言えばグッチ裕三さん。
 グッチ裕三さんは、自分のことを《全世代対応型娯楽請負人》だという。確かに幅広い年齢層から支持されている。

味の記憶
 両親が共働きしていたので、夕食の一品は裕三さんが作るようになった。小学校2年生の時、焼きうどんを作ったのが、料理事始め。
 彼には、絶対音感ならぬ、絶対味覚が備わっている。食べたものすべてを舌が覚えている。すぐに再現出来る。人が気にしないようなことでも鮮明に覚えている。

 小学校から高校まで12年間、電車通学をしていた。乗り換え駅の高田馬場や池袋で途中下車しては、いろんな料理を食べ歩いた。それを学校から帰って、家で再現した。物まねと一緒で、ここだと思う部分だけをディフォルメする。
 グッチ裕三さんの料理は、身近にある素材を独特の発想で組み合わせて作る。あるはずのものがなくても、そこにあるものをやりくりする。作りながら、その場で、どんどん方針を変える。手際がいい。迷いがない。見ていて気持ちいい。
 この冬は、彼に教わった『スチームコマツーナ』を何度も作った。生姜を皮を剥かずに、ヘラでつぶして粗みじんに切る。フライパンに菜種油をひいて、生姜をよく炒める。生姜の香りが油に移る。食べやすい大きさに切った小松菜を中火で軽く炒める。鶏がらスープを入れ、蓋をして1分ほど蒸し焼きにする。火を止めてから、塩・黒胡椒・ゴマ油を入れて味を調える。香ばしく力の沸く一品だ。
 これまでに公開したレシピは1000を超え、出版したレシピ本は合計350万部に達している。発想のユニークさ、簡単な作り方が受けている。「料理はね、おいしくなーれ。おいしくなーれと言いながら作っていると、ほんとうにおいしくなるよ」

きっかけは親友のエレキ
 実は、音楽の授業は苦手だった。成績もビリだった。ところが、大親友がエレキを始めたことが転機になる。大親友とは、長唄三味線の杵屋佐吉さんの息子さん。彼がエレキを始めたと聞いて、「三味線の跡継ぎが不良の楽器を演奏するとは何だ!」と説教に行ったら、「楽しいから一緒にやろうよ」と誘われ、ミイラ取りがミイラになってしまった。「真っ白な自分に、彼が音符を書いてくれた」と、グッチ裕三さんは振り返る。拒んできた音楽に夢中になってしまったのだ。
 楽器が出来ないのでボーカルにまわった。高校卒業後、すぐにバンド活動をはじめた。伝説のコミックバンド「ビジーフォー」を結成。ユーモアセンスで、物まねブームの立役者になる。「観客と楽しむ音楽こそが僕の快感。ライブがいちばん!」

 《ハッチポッチステーション》は、1995年から、NHK教育テレビで始まり、世界50ヶ国でも放送された。ハッチポッチとは、ごった煮スープのこと。まさに何でもありの楽しい番組だった。音楽、ギャグ、物まね…これまでの蓄積がすべて生かせた。グッチ裕三さん自身が、自分の子ども時代の遊びを鮮明に記憶していたことが、かなり役に立った。
 番組のコーナー「ミュージックテレビ」は、やっていても面白かった。マイケル・ハクション、ヒマン・ターナー、GUEEN…本物のビデオを繰り返し見て、細かく研究して、ここだと思う部分だけディフォルメをした。「子ども番組で大切なことは、自然に大袈裟なことが出来ること」らしい。番組は、子どもより、育児に疲れたお母さんが見て発散していたらしい。

父と先祖
 良きにつけ悪しきにつけ、《お父さんの存在》が、今日の裕三さんを形作っているといっていい。大手貿易会社に勤めていた父は、「まぶしくて煙たい」存在だった。自分の子どもだから、勉強出来てあたりまえという感覚の持ち主だった。「父には負けたくない。父を超えたい。だから手を抜かない」父の存在が、ある意味自分の励みだった。
 反面、父譲りのところもある。付和雷同が嫌い。納得いかないものには絶対従わない。協調性がない。いまの仕事をやる上では、着眼点や切り口が、人と一緒ではだめだという考え方として役立っている。
 バンド活動を始めたとき、父には内緒にしていた。進路選択の高校3年の時、「父は都合良くニューヨークに転勤してくれた。母がうまく隠してくれた」しかし、ニューヨークから帰ったら、息子はアフロヘア。唖然とした父は「やり直せ!」と一喝したが、息子は動じなかった。
 その後、テレビで歌っている姿を見て、ようやく認めてくれた。しかし「僕だってあれぐらい歌える」と張り合ってきた。父が重い腰をあげてライブに来てくれたので、見つけて近づくと、「こっちへくるな」と手で制止した。意地っ張りなのだ。
 グッチ裕三さんは、《先祖供養》を欠かさない。40代に入って、ものごとがうまくいかない時期があった。ある人に、先祖の供養をしたらいいと言われた。仏壇に向かって、お経を唱えたり、願い事をするわけではない。出掛ける前に「いってきまーす」帰ったら「ただいま」と言いながら、その日の予定を話したり、その日あったことを報告したりするのだ。月に一回は、墓参りにも行く。
 先祖の前では素直になれる。先祖には嘘がつけない。手抜きが出来ない。正直な自分がさらけ出せると、自分が磨ける。それに、先祖供養を始めてから、とってもいい偶然が増えた。面白いように、偶然が偶然を呼び、仕事にもいい効果をもたらしてくれる。

 最後に《エンターテイメント》とは何かと問うた。「先生が授業に来られないとき、自習時間を楽しくするスターが必要だ。僕はいつもそんな役割を担って来た。人を楽しませるのが好きだった。音楽を聞いた人が楽しい、料理を味わった人がおいしいと言ってくれたら、満足。僕の生きる役割はそこにある」

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)
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(近代文芸社)
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おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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