海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 「やっとかめ!」と再会の挨拶を交わした。名古屋弁で「久しぶり」。名古屋放送局にいたころ、『思いっきり中学時代』、のべ8時間ものラジオ特番『なんてったって中学生』の司会を一緒に担当したことがある。以来、本当に久しぶりの再会なのだが、歳月など全く感じさせない。名古屋出身のタレント兵藤ゆきさんは、いまは、ニューヨーク在住で、日本に里帰り中のところをスタジオにお呼びした。

いつのまにかの兵藤さん

 1952(昭和27)年、名古屋市生まれ。「どうせやるならトコトン楽しくやろうというタイプ」の両親のもとで育まれた。さすがの兵藤さんも、「なぜこんなに明るいの?」と思うぐらい明るい両親だった。どんなことに対しても放任主義。叱られた記憶がない。むしろよく誉めてくれた。芸能界入りも、結婚についても反対されなかった。
 兵藤さんは、小学校の頃、ずっと学級委員を務めていた。面倒見のいい姉ご肌はこのころから培われていた。近所のおばさんの茶飲み友達だった。人の心をつかむ屈託のなさは、生まれついてのものだった。
 管理教育の高校にうんざりしたあげく、ファッションデザイナーを目指して、デザイナー学校に進む。昭和50年、地元ラジオ局で、葉書整理のアルバイトをしていたら、いきなりDJ にならないかという話が舞い込む。飾り気のないトークは、若者たちに大受けで、最高でラジオ14本掛け持ちという超売れっ子になる。その後も、DJのほかにも、写真、小説、女優、映画監督…マルチな活躍を見せてきた。
 その兵藤さんが、いつのまにかニューヨークに行ってしまって、いつのまにか10年たってしまった。もともと英語は吐き気がするほど嫌いだった。日本以外で暮らすことを望んだことなど一度もなかったのに、結婚相手がニューヨークに留学したいと望むので、しぶしぶ同行した。すぐに帰国するつもりだったのに、「夫が勉強好きで、留学が伸び伸びとなってしまった」。夫は、大学院で社会学の博士目指して勉強中だ。
 兵藤さんは、日本が恋しくて、毎年、夏休みは2ヶ月半ほど長期休暇を取り、恒例の一時帰国をすることにしている。

アメリカ子育て事情
 いつのまにか、ママになった。1996年4月に44歳で出産。一人息子は10歳になる。小学4年生だ。家族を持って、子育てを経験して、兵藤さんもずいぶん変わった。「自分勝手だった性格が矯正された。家族とは、リーダーのいないチーム。夫も息子もチームメイト。個人個人がしっかりしていないといけない」。人間同士がフェアな関係になることを、息子に教えられた。
 慣れぬ異国の地での子育ては、さぞかし大変かと思っていたら、さにあらず。日本では見て見ぬ振りばかりだが、ニューヨーカーは、《見て見ぬ振りをしない度合い》が高い。

 冬の外歩き中「風邪ひかすから、帽子をかぶせないとだめだよ」と声をかけられる。と思えば、地下鉄に乗車中「暖房きいているから、帽子を取ったほうがいいよ」と声をかけられる。ベビーカーのサポートもごく自然にしてくれる。
 老若男女を問わず見知らぬ人から、何度も息子を誉められた。「こんなかわいい赤ちゃん見たことないよ」「こんなにかわいくて元気がいいのは、お母さんの世話がいいからだね」こうした赤ちゃん誉め誉め大会は、あっちこっちで普通に見られる光景だ。
 人前で、自分の子どもを誉めることもしばしばだ。泊まりにきた息子の友人のアンドレスは、自然にお礼の言葉が出てくる子どもだった。その話をすると、アンドレスのママは「私はあなたを誇りに思うわ」と息子を誉めて抱き締めた。アンドレスのママは、こうも言っていた。「ニューヨークには、世界各国から来た人がいる。そういう人達と交わることで、世界にはいろんな考えの人がいることを感じて、心の広い人間になってほしい」

 英語の苦手だった兵藤さんが、翻訳に挑んだ。題して『子どもを守る101の方法』。これでもかこれでもかというほど完璧な子どものガードマニュアル本だ。元ロサンゼルス市警察官のベニー・メアーズさんが書いた。
 その徹底したガードマニュアルのいくつか。「合言葉を決めておきましょう」「レストランでトイレに行くときも、子どもを連れていきましょう」「遊園地の乗り物には、子どもを先に乗せましょう」「知らない人から、その人の腕の長さ分以上に離れましょう」「子どもが大人にいやだ!?といってもよいと教えましょう」「親に信頼されていることを知らせましょう」子どもの安全は、親の最大の責任なのだ。
 アメリカでは、子どもだけの外出も、家での留守番も法律で禁止されている。子どもとは「自分で自分を救える能力が備わってくる小学校高学年まで」と、一般的に12歳未満を指す。違反したら、保護者は、監督不行き届き、幼児虐待の罪で逮捕されることすらある。
 兵藤さんは、翻訳に携わりながら、アメリカは、社会全体に、子どもを大事に見守ろうという空気があるところだと再認識した。子どもを巡る悲惨な事件が後を絶たない日本でこそ、こういう本を出す意義もあると思った。

 アメリカでは、子ども扱いせず、きちんと自分の意見が言える教育をする仕組みが出来ている。例えば幼稚園の授業に《Show &Tell》というのがある。文字通り、《見せて、話す》授業。自分の家から、お気に入りのおもちゃや写真などを持ってきて、それがどういうものなのか、なぜ好きなのか、みんなの前で説明するのだ。「読み書き」の前に「話す聞く」訓練をする。

 アメリカの父親は、育児に慣れている。週末の公園、ベビーカーを押しているのは、たいがい父親だ。オムツを取り替えたり、ミルクを飲ませたり、あやしたりしながら、ほかの父親と談笑している姿がそこかしこに見られる。妻が働き、夫が育児というケースも多い。「わが夫も、どんなに小さくても、子どもを一人の人格として見られる人。きちんと話し、きちんと聞こうという姿勢がある人だ」
 「日本での子どもに対する考え方は、一考も二考もする余地がある。子どもを子ども扱いしすぎている。子どもっぽい子ども教材が氾濫している。子どもだからしかたないと言いつつ、早くから大人社会に出ることを奨励している。メディア情報に振り回されて、消費社会の格好の餌食と化している」と、日本の子どもを取り巻く環境に、兵藤さんの意見は手厳しい。笑い顔が一瞬真顔になった。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)
「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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