海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

不幸になるから元気が必要
 大阪に、いつも元気でわくわくしている人がいることは伝え聞いていた。しかし、大阪には、ほとんど、いないらしい。心を元気にする術を伝授するため、全国各地を飛び回っているからだ。研修や講演は、年間250回を超える。笑いえくぼが印象的なその人の名は、大谷由里子さん。肩書は、人材活性プロデューサー。
 「3回しか笑わない人生より、3万回笑いたいやん!笑うと、心が軽くなる。軽くなれば、心の余裕も出てくるやん」

 それにしても、なぜ、そんなにいつも元気なのだろうか。理由を問うと、明快な答えが返ってきた。「必ず不幸はやってくると思っているから」阪神大震災に遭遇した体験があるだけに、説得力がある。「人間の明日なんて保証されてない。だったらきょう一日一日を幸せに生きていくことにエネルギーを使おうよ」
 大谷さんがいう「元気」とは、声が大きいとか、張り切っているとか、モチベーションが高いということではない。「気を元に戻す」つまり本来の自分に戻って、自分らしく生き生きしていることをいう。「私の気を元に戻すものは、温泉と素敵な仲間たちやなぁ」

私は、人の応援団
 大谷さんは、昭和38年、奈良県生まれ。子どもの頃は、意外にも「ネクラだった」そうだ。ご本人曰く「人見知りでわがままで、友達も少なかった」
 しかし、きっぷのいい近江商人の祖母の心意気は、受け継いだ。祖母の口癖は「死んでから、ありがとう言うてもうてもしゃあない。生きているうちにありがとうというてもらわな」だった。だから、祖母の影響を受けた大谷さんは、「生きている以上に大切なことはない」と思うのだ。
 就職活動は鳴かず飛ばず、 社も会26社訪問したが手ごたえは全くなし。そんな中、「ひょっとしたら、さんまさんに会えるかな」とミーハー気分で受験した吉本興業に内定をもらった。大谷さんは、吉本で、一気に弾けていく。
 入社後、最初に経験したのが、あの横山やすしさんのマネージャーだった。自分に甘く、他人に厳しく、感情で動く人なので、振り回されることばかりだったが、なだめつすかしつ、やすしさんの信頼を得るようになった。そして「人をマネージメントするとは、その人をどこまでも認めること」だと悟った。「私は、人を認め応援する自信がある。だって、やすしさんのマネージャーが務まったんだから」

 大谷さんは、宮川大介さん、花子さんの売り出しに成功した。無名の二人を、あの手この手で乗せながら、全国区にしていった。「大・花は、私にとって最高のおもちゃ。自分だけの大好きなおもちゃを、どうしたらもっと面白く遊ぶことが出来るか、考えるだけで楽しく、元気になる」「仕事だと思うからしんどい。仕事を、自己実現のためのおもちゃだと思えば気が楽になる」

 結婚のため、吉本を退社したが、再び活動を再開。吉本時代の経験や人脈を生かし、27歳で企画会社を立ち上げた。イベントプランニングや吉本とのジョイントで「よしもとリーダーズカレッジ」といった事業展開をする。しかし、「字解きをしてみると、起業は、己が走って作るもの。企業は、人を止めることになる。10年たって、管理しはじめ、人を止めていた」ことに気づく。
 会社をほかの人に任せ、自分はフリーのプロデューサーとして、心を元気にする研修事業を展開することにした。志のある人を育てていこう、自分で動く人材を育てよう。いわば企業を活性化するコンサルタントだ。定年を控えた管理職にも「いまさらとか、この年になってと言うのはやめましょうよ。消化試合の人生送るのやめましょうよ」と呼びかける。
 名刺には、「教育こそ究極のエンターテイメント」と刷り込んである。研修は、《コーチング》に基づいて行われる。大谷さんが36歳にして出会った《コーチング》という考え方は、5年ほど前にアメリカから入ってきたメソッドだ。「ああせい、こうせい」は、限りなくティーチに近い。ティーチは、最初に答えが用意されていて、それを教え込むことだ。相手に考えさせ、答えを出させ、戦略を練らせるのがコーチだ。自分の思いついたことを形に出来たら、元気になれるはずだ。
 コーチングは、相手を認め、引き出し、応援することだ。「ひたすら話を聞いてくれる出来のいい恋人のようなものだ」と、大谷さんは比喩する。そして、こういうことは、吉本のマネージャーとして実践してきたことなのだ。
 コーチングとは、結局、自分のコーチングでもある。「人を育てようという人間は、自分が幸せでないとアカン」と言い切る。そして、「商売は、自分だけが幸せでもアカン。みんな幸せにしないとアカン」と続ける。

「なぜ?」より「どう?」
 日本人はWhyを使いすぎる傾向がある。自分の境遇を不幸だと嘆いている人は、その理由を過去に求める。「あのとき〇〇だったから、あの人が〇〇って言ったから」なぜ、なぜと問い詰めることが多い。もっとHowを使ったらいいのにと、大谷さんは思っている。どうしたらいいのか、一緒に考えたい。どうしたら失敗しないのか、一緒に考えて、行動を変えていけば、必ず変化が見えてくる。小さなゴールを達成したとき、思いっきり、自分をほめればいい。そうしたら、自分が言われたら嬉しい言葉を他人にかけられるようになる。大谷さん自身は、「会えてよかったと言われるのがいちばん嬉しい言葉」だそうだ。
 いまの世の中、一億総評論家だ。批判や批評が多すぎる。もっと、尊敬すること、ほめることを大切にする世の中にしたいと大谷さんは考える。
 「最近の若い人はありがとうって言わないと憤っている人は、自分がありがとうって言われる人生を送っていないのではないか」「人の人生を応援出来る喜びを感じようよ。ありがとうって言われ出すと、友だちが増えるよ」
 大谷さんの笑いえくぼが、さらにくっきり見えた。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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