海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
 「この方が家田荘子さんのお母様ですよ」。そんな言葉に、私は弱い。近くに居ながら、遠い存在の方であったのだから。
 3月18日から20日の3日間、武豊町中央公民館にて『いえだ書院』の初めての書道展が行われた。受講生と共に真剣に取り組んだ作品展は、家田朱蓬先生と受講生との集大成として開かれた。会場は来場者で活気づいていた。そして、先生のお嬢さんのノンフィクション作家・家田荘子さんも駆けつけて会場に花を添えられた。会場は笑いがこぼれ、和気あいあい、ちょっとしたサロンが誕生していた。家田先生は、来客に会釈をされ、微笑んでいらっしゃった。会場にさりげなく光る作品、『空に舞うパラシュート』と書かれた、幻想的でロマンチックな言葉に私は魅了されていた。美しく繊細でありながらもダイナミックな線、墨の濃淡を楽しむ華麗な作品ばかり。優しく、温かな印象を受ける受講生の方たちの力作もたくさん展示され、その作品に引き込まれていた。隣室では、お抹茶のおもてなしが行われていた。
 会場での家田先生は、黒のワンピースに赤のイヤリングと靴、ちょっぴりエキゾチックな、おしゃれで都会的なセンスも光っている。美貌はもちろんだが、とにかく若い。テンポの早い会話に、頭の回転のよさを感じた。また、努力を惜しまない方だともきく。毎朝出掛けるモーニングが楽しみだとか。華やかな日常を送っていらっしゃるのかと思いきや、意外にも庶民的でいらっしゃった。
 まだ、私が幼かった頃、理解を超える内容だけに息をのんで読んだ家田荘子さんの代表作『極道の妻たち』。父に連れられ、家田荘子さんの講演を聞かせていただける機会があった。ピンクのスーツに黒のストッキング、ピンクの靴で登場した家田荘子さんに目をみはった。第一声が「私って小柄でしょう」と、いわれたことを鮮明に覚えている。豊かな個性に行動力、キレのいいトーク、つながりの深い地元の土地柄を尻目に情報収集に駆けずり回る。そんな姿が力強く、うらやましくも思った。背伸びしたいあの頃の私にとって、家田荘子さんはとてもカッコいい女性に映った。今も。
 先生にお嬢さんの素顔を話していただいた。「パパが大好きな娘」と、いわれた。そのお父様は、気品のある方でいらっしゃった。「娘を撮ったんだよ」と、写真を見せてくださった。聞けば、趣味が写真といわれる。アルバムには、プロ顔負けの写真がずらりと並んでいた。その光景は家族の温かさが伝わる、どこにでもある家庭のひとコマであった。また、荘子さんはご先祖さまや神仏を大切にされていると話された。4月から、高野山大学院にも通学されている。日本的な習慣・風習をこよなく愛し、日本女性の古風さ、かわいらしさを兼備えて、ただカッコいい女性とは違う表情もみせてくださった。
 私が訪ねたそこは、肩肘を張らずに自然体でいられる家庭的な雰囲気が漂っていた。ドラマチックで複雑な半生を歩まされてしまったあの頃とは違って、今はかけがえのない親子の幸せのかたちが、そこにはあった。
赤井伸衣